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船向けである。

簡易ERCS(水洋会のB分類):紙海図と法的に同等ではなく、簡易な装置である。ERCを基礎に、そのデータのごく一部を用いた情報の表示、接続されている電子航法装置等により位置情報、針路、速度等の本船のデータを表示する。漁船、プレジャーボート等、小型船をターゲットとしているのでもっとも需要が多いと見込まれている。この装置は、プレジャーボート向けに、資格が不要な第四種レーダー、簡易ARPA等と結合されて行く可能性が高い。

 

(3) 簡易な装置

いわゆるカラープロッタ、ビデオプロッタ、コースプロッタと呼ばれ販売されている装置で、メーカーが作成した海岸線と位置情報が表示出来る。低価格であり現在の出荷量は漁船をターゲットに、もっとも多い。漁船では、漁場の記録や操業状況を容易に把握可能であることや、操業中の位置記入作業の軽減等の目的に適しており、費用対効果を考えると効果的なので普及したと考える。10トンから100トン程度の巻き網漁船、延縄漁船、底引き網漁船では、ビデオプロッタ無しの操業は考えられないほど普及している。人手のない5トン程度の小型釣漁船では、ビデオプロッタとマグネチック式のオートパイロットはいまや必需品である。

簡易な装置に簡易ARPA映像を重畳したものもある。この種装置は、内航船では漁船の場合ほど普及しなかった。この理由として大部分の内航船は、航海距離、航海時間が短い通い慣れた海路であること、ARPA映像と海岸線画像の整合性、航海計画作業の省力化に費用対効果の面からの利点が少ないためと言われる。今後、これら従来からの簡易な装置は簡易ERCSよりグレードの高い装置に移行して行くと予想される。

将来、IBSはECDIS、ECSを中心に展開され、必然的に統合化された無線通信システムとの結合がなされて行くものと期待される。

 

なお、下記?、?に箇条書きしたECDISに関する未解決問題に回答が与えられた後での、全世界的にみたECDISとECSの需要の比率は概略1:100と見る向きもある。国際的には、ECSとして作成費用が安価ななラスター海図が優勢となる可能性も否定できないのが問題である。

電子海図について指摘されている未解決の問題点に次の?、?がある。

? 大縮尺沿岸図等の作成権利は沿岸国にあり、第三国は無許可で沿岸図を作成できない。

? 紙海図で可能とされていた第三国による海図の複製は、複写容易な電子海図の場合、沿岸国の海図作製権、版権を保護するための二国間協定が必要とされる。

 

これらを考慮すると、従来のBA(British Admiralty)、DMA(Defense Mapping Agency of USA)の主導による全世界的な海図供給体制が変わり、外航船は個々の沿岸国が刊行する電子海図を入手することになる。さらに発展途上国の場合、技術的、経済的に電子海図そのものを供給できない可能性もあり得る。この問題を解決するためにWEND(Worldwide ENC Data Base)は国際協力を推進する努力を重ねているが、いまだ緒につ

 

 

 

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